ものづくりの分野において製品や部品を作る際に「どのような材料を使うか」という選定は非常に難しいです。
なぜなら、材料というものは分類すると膨大な種類があり、様々なメーカーが取り扱っている独自の材料も含めると、途方もない選択肢が存在するからです。
材料を選定する工程は製品の特性や最終的な性能を左右するだけでなく、コストや納期にも非常に大きな影響を与えます。
それどころか、適切な材料を選択できなければ「加工自体ができない」という状況にも陥ってしまいます。
しかし、膨大な材料の中から毎回ひとつひとつピックアップしていくのではキリがありません。
そこで重要になってくるのが「標準化」です。
実際の現場で使われている材質は大体は固定化されているので、セオリーさえわかればそこまで悩む必要はありません。
まずはセオリーを理解し、用途によってさらに使い分けていきましょう。
今回は材料を学ぶ第一回の記事として材料の全体像を明らかにしていきます。
材料の全体像
材料の分類は基準によって異なりますが、大きく分けると「金属材料・非金属材料・複合材料」の3つに分類されます。
1.金属材料
金属の定義は主に3つです。「光沢があり、展延性があり、導体である」
かなり簡潔に言ってしまいましたが、身近なものですと鉄やアルミ、銅、チタン、金、銀などが金属にあてはまります。
この中でも、特に機械部品や工業製品に使用される金属を紹介していきます。
そのため金や銀などの装飾品は除外させていただきます。
(ちなみに金や銀は高級なので部品材料として使うことは少ないですが、めっきなどに使われることはあります。)
1) 鉄鋼材料
鉄鋼材料は部品材料として最も基本的なものです。
まずは鉄鋼材料を理解することが材料理解の第一歩となります。
鉄鋼は橋や建物などの構造物だけでなく金属性のカバーや精密部品、金型、シンクなど非常に様々な場所に使われております。
①炭素鋼
炭素鋼は炭素量によって分類され、炭素0.1~0.3%は軟鉄、炭素0.3~2.1%程度の硬鉄に分かれます。低炭素鋼には、建造物にも使われる一般構造用鋼(SS400)などがあり、硬鉄には機械部品に多く用いられる機械構造用炭素鋼(S45C)などがあります。
②合金鋼
鉄とクロムの合金であり、キッチンでもよく見かける錆に強いステンレス(SUS)、耐摩耗性に優れた工具鋼(SK)などがあり、炭素鋼よりも比較的高級です。
また、金属を削る刃物などに使われる「超硬」も合金に分類されます。
③鋳鉄
炭素2.1%以上の鉄を用いた鋳鉄(型に流して成形したもの)全般を指します。
マンホールやフライパンなどにも鋳鉄が使われており、JISの種類ではFC250の「ねずみ鋳鉄」などがあります。
2) 非鉄金属
非鉄金属とは「鉄」以外の金属です。
代表的なものですとアルミや銅、ニッケルやチタンなどがあげられます。
それぞれの金属に異なった特性があるので、鉄とうまく使い分けることが重要です。
この中でも特に理解しておきたいのがアルミ、次いで銅です。
①アルミニウム系
アルミは重さが鉄の約1/3で、錆にも強く非常に優れた材料です。スーツケースなどに使われるジュラルミンや、飛行機にも使われる超々ジュラルミン(A7075など)等のアルミ合金が存在します。
軽量化できるということは非常にメリットが多く、人間の負担が減るだけでなく、モータなどの動力の省力化にも繋がります。
②銅系
銅は熱や電気が伝わりやすく、錆に強い材料です。ワイヤーや電線などにも使われ、電子機器のパーツには欠かせない存在です。鉄より若干重く、価格も比較的高いです。
③その他
その他には軽くて錆に強い「チタン合金」などがあります。材料費は比較的高く加工も難しい材料ですが、強度にも優れており人体への適合性も高いため、医療分野や航空機などに使用されております。
2.非金属材料
非金属材料とは、”金属以外”の材料です。
陶器などのセラミックス材料、身近にあふれるプラスチック材料やゴム、木などもこちらに分類されます。
1) 無機材料(セラミックス)
無機物とは炭素を含有しないものであり、無機材料は「炭素以外の元素でできた化合物」の総称です。無機材料はセラミックスとも呼ばれ、主に粘土や珪石等などの原料でできています。
陶磁器など古くから存在する「セラミックス」と、精密に製造工程を管理・改良したファインセラミックス(ニューセラミックスとも言う)が混在しますが、こちらについてはまた別の記事にて解説いたします。
①ガラス
ケイ酸塩を主成分とする硬く透明な物質です。
建築物をはじめ様々な場所に使われており、人間にとって非常に身近な存在です。
②アルミナ(酸化アルミニウム=Al2O3)
電気絶縁性や耐熱性に優れ、治具や絶縁部品などに使用される材料です。
また、アルミニウムの原料にもなります。
③ジルコニア(二酸化ジルコニウムZrO2)
耐熱性セラミックスの原材料としても用いられる、強度と靭性の高い材料です。
刃物や摺動部品にも使われています。
2) 有機材料
有機材料については、ひとまず「金属以外で炭素を含む化合物」という認識をしていただければ問題ないかと思います。
中でも、身近にあふれるプラスチックは人の生活には欠かせない存在となっております。
特に量産化がしやすく、多くのプラスチックが型に樹脂を流し込んで固める製法(射出成型)によって大量生産されております。
①プラスチック
人工的に製造された合成樹脂の事で、非常に身近な材料です。プラスチックは大きく2分類でき、加熱すると軟らかくなり冷やすと固まる「熱可塑性樹脂」と、加熱すると硬化し元に戻らない「熱硬化性樹脂」に分かれます。
さらに、熱可塑性樹脂は3つに分類され、日用品に用いられる大量生産向きの汎用プラスチック、耐熱性が高く機械部品に適したエンジニアリングプラスチック(エンプラ)、さらに難燃性などを高めた金属部品の代替品ともなりうるスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)があります。
②その他
ゴムや木材、皮などその他様々な材料があります。
中でもゴムには衝撃吸収、弾性に優れるだけでなく、液体や気体を漏らさない気密性が必要な箇所にも使用されます。
3.複合材料
複合材料とは、2つ以上の材料を組み合わせた材料の総称です。
母材(マトリクス)と強化のための強化材料によって構成されています。
1) 金属系複合材料
- 繊維強化金属(FRM=Fiber Reinforced Metal)
「鉄や銅・アルミ・チタン」などの金属を母材に、繊維状の「タングステンやアルミナ・炭化ケイ素」などを加えた複合材料です。
強度・弾性にすぐれており、航空宇宙系の部品にも用いられています。
2) プラスチック系複合材料
- 繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)
樹脂を母材とし、ガラス繊維や炭素繊維を混ぜた複合材料です。
通常のプラスチックに比べ、強度が向上しております。炭素繊維強化の「CFRP」が有名です。
総括
材料の全体像が見えてきましたでしょうか。
様々な材料それぞれが特性を持っており、用途に合わせて適切に選択をしていきます。
各材料の詳細や特性は、次回の記事で紹介していきます。
材料がもつ特性『重さ、錆びにくさ、熱や電気の伝えやすさ』などについて解説していきます。→【材料を学ぶ】2.材料の特性 機械的性質、物理的性質、化学的性質を解説