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【材料を学ぶ Part.2-2】ステンレス鋼の種類

前回はアルミ合金をピックアップしましたが、今回は鉄合金の中でも重要な位置に存在する「ステンレス合金」を詳しく解説していきます。

ステンレス鋼(Stainless Steel)は、10.5%以上のクロムを添加した合金で、炭素の含有量は1.2%以下と定義されております。ステンレスは非常に錆に強い材料で、機械部品の材料としても重宝されています。

ステンレスはなぜ錆びにくい?

ステンレスが錆びにくいのは、「ステンレス中のクロム」と「大気中の酸素」が結合し不働態被膜という薄い被膜を形成しているからです。
この不働態被膜は1~3ナノメートル程度と非常に薄い膜で、表面が傷ついても一瞬で再生します。そのため、鉄が酸素や水と結合して錆を発生する隙を与えないのです。

ちなみに、ステンレス中のクロム含有量はかつて「13%以上」とされていましたが、精錬技術の進歩により「炭素・硫黄・窒素」など耐食性を低下させる元素を低減させること成功したため、クロム含有量を10.5%以上に引き下げられました。

ステンレスの不働態被膜
一瞬で再生する不働態被膜

ステンレスも錆びてしまう

錆びにくいステンレスですが、”錆びない”わけではありません。
例えば、キッチンに使われているシンクもステンレスですが、錆びてしまっている部分があるのを見かけたこともあるのではないでしょうか。
原因は様々ですが、「深い傷の部分に水がたまる」「塩分が付着してしまっている」などの理由があります。

このように、ステンレスは塩化物イオンに弱く、不働態被膜が不安定状態になると錆びてしまいます。もしくは、水分や汚れによりクロムと酸素が結合できない状態になり、不働態被膜が形成されないまま腐食が進んでしまうというケースがあります。

もう一つの特徴、ステンレスの耐熱性

ステンレスには錆びにくいという以外にも、「耐熱性が高い」という利点もあります。
一般構造用鋼であるSS400の安定使用温度が350℃程度までに対し、SUS304は500℃程度でも引張強さはほとんど低下しません。
他のステンレス材料についても多少バラツキはあるものの、400℃以上でも引張り強さはほぼ低下しません。

ちなみに、アルミ合金も不働態被膜を形成する「錆に強い材料」ですが、融点が660℃と非常に低く、使用温度の目安も200℃程度となっています。

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ステンレスの種類

ステンレス鋼の種類は大きくわけて5種類に分類されます。
(機械加工材料に焦点をあてているため、二層系ステンレスを除外した4種を紹介しております)

ステンレスは100~200種類以上に分類されると言われますが、実際の部品材料として使われるものは大体決まっております。
代表的なステンレスの品番も紹介しながら、特徴を解説していきます。

※途中、耐孔食指数という数値がでますが、こちらは錆びにくさの指標のひとつです。
数値が高いほど錆びにくいと捉えてください。

耐孔食指数=[Cr (%)+ 3.3 x Mo(%) + 16 x N(%) ]
この数値が高いほど隙間腐食や孔食が起きにくい

1.オーステナイト系ステンレス

 耐食性が高く、溶接性に優れたステンレスです。汎用性も高いですが、焼入れ硬化性はありません。

代表的な品番

2.フェライト系ステンレス

フェライト系ステンレスは磁性を有し、磁石にくっつきます。
熱処理による硬度の上昇はありません。強度や耐食性も秀でているわけではありませんが、他のステンレスに比べると安価な部類に入ります。

代表的な品番

3.マルテンサイト系ステンレス

マルテンサイト系ステンレスは、S45Cなどの炭素鋼のように焼入れができます。そのため、高い強度を求められる場面に用いられることが多いです。耐摩耗性にも富み、刃物や工具の材料として使用されることもあります。

炭素量が多く、オーステナイト系ステンレスと比較して耐食性は劣ります。

代表的な品番

4.析出硬化系ステンレス

固溶加熱処理によって高い硬度を得たステンレス鋼です。
オーステナイト系に次ぐ耐食性を有します。

代表的な品番



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