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PVDコーティングとCVDコーティングの違いとは?TiCNやDLCなどの処理についても解説!

PVDコーティング、CVDコーティングの違い
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PVDとCVDの違い

コーティングは金属などの表面にチタンやクロムなどを付着させて、硬度や耐食性などを向上させる技術です。ドリルの先端や工具の刃先など、日常でもコーティング技術を見かける場面があります。

PVDとCVDが何かというと、コーティングの種類ではなく処理の方法です。
・PVD(Physical Vapor Deposition)=物理蒸着
・CVD(Chemical Vapor Deposition)=化学蒸着


なので「PVDコーティングをしたいのですが、、」と言っても「種類はどのコーティングですか?」と返されるわけです。
コーティングの種類には「TiCN」「TiN」「TIC」「DLC」などといった様々なものがあります。
例を挙げると「TiCNという種類のコーティングを、PVDという方法によって行う」という事になるわけです。(コーティングの種類によって方式は決まっています)

CVDは処理温度が高く、寸法変化や硬度低下などを引き起こすことがあるので、現在はPVD方式によるコーティグが主流です。

では、それぞれの方法を解説していきます。

PVDコーティング

プラズマなどのエネルギーを使用した物理的な被膜形成方法です。
窒素などの不活性ガス雰囲気中にて、チタン・クロム・モリブデン等の金属を成膜していきます。

PVDコーティングの特徴、メリット

低温で行う処理なので寸法変化や硬度低下、歪などが発生しません。
金型などの精密な部品にはCVDではなくPVD処理が適しています。

CVDコーティング

熱エネルギーを使用した科学的な被膜形成方法です。
1000℃程度の常圧雰囲気の中で蒸着処理をします。

CVDコーティングの特徴、メリット

処理温度が1000℃以上と高いため、硬度変化や変形の恐れがあります。

コーティングの種類

チタン系コーティング

TiCN(Titanium Carbon Nitride)コーティング

TiCNは炭窒化チタンコーティングで、TiNに炭素を加える事で低摩擦性を得た被膜です。
幅広い用途で使用される汎用性の高いコーティングです。

方式:PVD
硬度:HV2500~3000程度
特性:耐摩耗、密着性、耐食性、耐熱性(400-500℃)、低摩耗性に優れる
用途:刃具、パンチ
色調:ブルーグレー、他

SKD11などは熱処理をした後に高温でコーティングをしてしまうと硬度が変化してしまいますが、TiCNのように真空下500℃以下でコーティングできるので硬度低下を招きません。

※画像はイメージです。また色調は母材や処理業者様によって異なります。

TiCコーティング

TiCは炭化チタンコーティングで、硬く密着性の高い被膜です。
小さい穴や複雑な形状に対する密着も良好なので、プレス部品にも適しています。
CVD方式なので、処理温度が高く変形や硬度変化の恐れがあります。

硬度:HV3000程度
特性:密着性、耐摩耗性
用途:プレス金型
色調:シルバー、他

※画像はイメージです。また色調は母材や処理業者様によって異なります。

TiNコーティング(Titanium Nitride)

TiNは窒化チタンコーティングで、硬く耐摩耗性に優れた被膜です。
綺麗な金色になるので、装飾用の目的としても採用されることがあります。

方式:PVD
硬度:HV2000程度
特性:密着性、耐摩耗性、耐食性、耐熱性(600℃)
色調:金色

※画像はイメージです。また色調は母材や処理業者様によって異なります。

TiAlNコーティング(Titanium Aluminium Nitride)

TiNにアルミニウムを添加することで耐熱性をさらに向上させた被膜です。
ドライで使用される切削工具に使用されます。

方式:PVD
硬度:HV3000程度
特性:耐摩耗性、耐抑制、耐熱性(800℃以上)
用途:切削工具
色調:バイオレットグレー

※画像はイメージです。また色調は母材や処理業者様によって異なります。

カーボン系コーティング

DLCコーティング(Diamond Like Carbon)

その名の通り、ダイヤモンドのような非晶質炭素コーティング膜で出来ており、硬度が非常に高いだけでなく摺動性に優れています。
コーティングの成膜条件を調整することで、特性をコントロールする事も可能です。

硬度:HV3000程度
耐熱性:350℃
特性:高硬度、耐食性、低摩擦性、化学的不活性、生体適合性
色調:ブラックグレー、他

※画像はイメージです。また色調は母材や処理業者様によって異なります。

クロム系コーティング

CrN(Chromium Nitride)

耐摩耗・耐凝着性に優れた被膜です。
※凝着とは異種の材質同士が摩擦などでくっ付く事です。
 CrNは耐凝着性があるので摺動性に優れます。

方式:PVD
硬度:HV2000程度
特性:耐摩耗性、耐凝着性、耐熱性(750℃)
用途:摺動部品
色調:シルバーグレー

※画像はイメージです。また色調は母材や処理業者様によって異なります。

AlCrN

耐熱性が非常に高いアルミとクロムの複合被膜です。
優れた耐久性を持ち、金型に作用する事で長寿命化を図ることのできる新世代のコーティングです。
硬度:HV3200程度
特性:耐摩耗性、耐凝着性、耐熱性(1100℃)
用途:金型、切削工具
色調:シルバーグレー、ブルーグレー、他

参照

”コーティング”.株式会社東研サーモテック.2023-02.https://tohkenthermo.co.jp/thin-film-coating-for-metal/
”PVD(CVD)コーティングとは?”.株式会社フジ.2023-02.https://www.fuji-mold.co.jp/media/mamechishiki/a12
”コーティングパンチ -TiCN-”.Misumi.2023-02.https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/press_mold_design/pr01/a0215.html
”TiC トーヨー・タイシーコーティング”.トーヨーエイテック株式会社.2023-02.https://www.toyo-at.co.jp/products/hyomen/cvd_tic.html
“AlCrN系”千代田交易株式会社.2023-02”https://www.chiyoda-trade.co.jp/index.cgi?mode=product&pro_code=100210”

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