皆さんは材料の防湿対策をしていますでしょうか?
日本は湿度が高くジメジメしているので、夏場は室内の湿度がすぐに60%を超えてしまうほどです。3Dプリンターのフィラメント材料などを保管する場合、密封容器などに入れて湿度を20%以下に保つことが重要だと言えます。
かと言って、扱っている材料全ての防湿を完璧にすることは中々難しいです。
そこで今回は材料毎の吸水率を比較し、特に防湿に力を入れた方がいい材料をチェックしていきます。
材料が吸水するとどうなる?3D造形への影響は
材料が吸水すると下記のような症状の原因となる恐れがあります。
- 造形時に糸を引きやすくなる
- 造形表面が荒れる
- ノズルが詰まる
吸水率の比較
吸水率(%) = (吸水後質量ー吸水前質量) / 吸水前質量 x 100
【0.4%】
ナイロン11(PA11)
【0.2~0.45%】
ABS
【0.35】
PLA
【0.25~0.35%】
ナイロン12(PA12)
【0.23~0.26%】
ポリカーボネート(PC)
【0.01~0.02%】
ポリプロピレン(PP)
※吸水率はあくまで目安です。試験方法、製法やメーカーによって差異がございます。
所感
ナイロン系の材料は種別によって吸水率に幅があります。ナイロンの分子にはアミド基があるため、水との親和性が高く、吸水率が高い傾向がみられます。
逆に、ポリプロピレン(PP)は水との親和性が悪いため、吸水しにくいです。
PETGの有効なデータは見つかりませんでした。PET自体の吸水率が0.2~0.3%程度というデータはありました。グリコールの添加がどの程度の影響を与えているかは不明ですが、恐らくABSなどとそこまで大きな差はないかと思われます。
結論
結論、ポリプロピレン以外のフィラメントは防湿に注意した方がいいと言えるでしょう。つまり、ほぼ全ての材質ということですね。TPUに関する正確なデータはありませんでしたが、吸湿による造形不良は実証的に知見を得ていますので、個人的にはPLAやABSよりもさらに注意した方がいいと思います。
また、造形時のノズル温度が高いほど内部の水分が造形に悪影響を及ぼす可能性が高くなるので、PLAなど低温度で反らずに造形できる材質は”多少は影響を受けにくい”と言えるのではないでしょうか。
どちらにせよ、しっかり防湿した方がいいですね
参照
“素材のワンポイント講座 吸水率の高いプラスチック・樹脂素材”.湯本電機株式会社.2023-09.https://www.yumoto.jp/material-onepoint/plastic-the-water-absorbent
“プラスチックの物理性質(2)―吸水率および吸水特性:プラスチック材料の基礎知識(19)”.プラスチック成形材料DB.2023-09.https://plabase.com/news/10085
“PLAの吸水率と保管形態による吸水率変化“.Nature3D.2023-09.
https://nature3d.net/development/pla_waterabsorption.html