応力集中とは?荷物掛けフックを例に、安全率と共に簡単な説明をします

品質管理

応力集中とは、物体の一部に高い応力が発生する現象を指します。
機械部品や構造物において、急激な形状の変化、凹凸や切り込みが存在する部分では高い応力が生じやすくなります。
この高い応力の部分が破壊や劣化の起点となりうるため、設計時には特に注意が必要です。

フックの例を考えてみよう

壁から突き出たフックの例を考えてみます。
このフックに30N=約3kgの荷物がかかるとします。
このフックの根元には荷物の重さによる応力が集中します。
現在フックの太さをΦ3に設定しておりますが、この細いフックでは過度の荷重により折れてしまう可能性があります。

簡単なシミュレーションで確認

シミュレーションで簡易的に確認してみます。
黄色~緑の部分に応力が集中しています。
安全率の最小値は1.05程度なので、このままだと壊れてしまう可能性が高いです。

安全率とは?
安全率は簡単に言うと、部品の耐久性や安全性を確保するための指標となります。荷物を引っかけたり外したりするフックには”繰り返し荷重”がかかります。安全率が”1″だと少しの外部要因ですぐに壊れてしまいます。
推奨される安全率は材料や用途によって異なりますが、今回のフックではひとまず安全率”5″以上を目指してみましょう。
ちなみに、エレベーターを吊るワイヤーの安全率は10以上に設定されています。

応力集中を避ける工夫

 応力集中を軽減するための一つの方法として、フックの付け根にR(曲率半径)を持たせることが挙げられます。このRを追加することで応力が均等に分散され、フックの破壊リスクが低減します。

見てわかるように、フック付け根の応力が分散されています。
ただ、安全率は多少上がったもののまだまだ使用に堪えません。

安全率を上げよう

耐久性を上げる一番シンプルな方法として、フックの直径を太くしてみましょう。
フックの直径をΦ5にしてみます。

これで最小安全値が5を超えました。
今回は荷物掛けのフックなので、5あれば充分かと思われます。
このように、機械設計の際には応力集中を避ける工夫や部品の耐久性を保つための安全率の確保が不可欠です。適切な設計を行うことで、製品の品質や安全性を向上させることができます。