【部品】ねじインサート、ヘリサートとは 種類や特徴、用途、ヘリコイルやエンザート、スプリューなどの呼称の違いを解説

機械加工・図面知識

ねじインサートとは、埋込み型のタップ穴(めねじ)のことです。金属(主にステンレスや黄銅)でできたインサートを埋込むことによって、アルミや樹脂部品などネジ穴の強度が低い材料の弱点を補うことができます。また、破損したねじ穴の補修にも使われる場合があります。

ねじインサートにはいくつかの種類があり、商標で呼ばれることも多いです。どのような違いがあるのかみていきましょう。

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ねじインサートの種類

Eサート(旧ヘリサート)

Eサート(旧ヘリサート) 飛び出ている部分が”タング”

ヘリサートは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。株式会社ツガミが日本で初めて誕生させた”ねじインサート”が「ヘリサート」です。ヘリサートは2001年に名前が「Eサート」に変更しましたが、品質や性能は全く同じです。現在でもヘリサートの呼称が使われることが多いです。

コイル形状をしており、専用のタップ穴に専用工具で挿入して使用します。コイル型なので、ねじ山やピッチのずれにも柔軟に対応することができます。

ヘリサートは登録商標なので、株式会社ツガミの製品以外は実質ヘリサートではないのですが、コイル型のねじインサート=ヘリサートと捉える場合もあります。

また、コイル型のねじインサートには日本スプリューの「スプリュー」やリコイルジャパンの「リコイルインサート」などがあります。いずれも各社の登録商標です。

Eサート、その他コイル型インサートの特徴

  • 専用の挿入工具が必要
  • 専用のタップ穴あけ工具が必要
  • 挿入後のタング折りが必要
  • 形状がスマートで省スペース
  • コイル形状なのでネジピッチの誤差も調整できる

タングレスインサート

ヘリサートなど、通常のコイル型インサートには”タング”という出っ張りが付いており、挿入後にこのタングを折り取って除去する作業が必要です。しかしこのタングレスインサートは、「タングがないコイル型ねじインサート」です。タングを取る作業がない分、作業性が向上します。

タングレスインサートの特徴

  • 専用の挿入工具が必要
  • 専用のタップ穴あけ工具が必要
  • タングを折って除去する作業が不要

エンザート

インサートの内外径にネジ山が成形されており、タッピングにより母材に挿入していきます。ヘリサートと違い専用のタップ穴が不要で、タッピングによる強固な結合が可能です。
エンザートはKKVコーポレーションの登録商標です

エンザートの特徴

  • 専用の挿入工具が必要
  • 専用のタップ穴は不要
     下穴をあけて挿入するだけですが、下穴径は材質や加工性などによって微調整が必要です。
  • タングが無い
  • 強固なめねじの形成が可能
     タッピングの食いつきによる強固なねじ穴の形成が可能です。ただしセルフタップによる切粉が発生します。
タッピングとは

タッピングとは、ねじ自身が「ねじ山を切り込んでいくことができる」ねじです。そのためタップ穴が不要で、下穴があれば挿入していくことができます。

イリサート

コイル型ではなく、一体型のインサートです。切削加工により作られているため、ピッチ飛びやコイルの飛び出しが発生しません。専用のタップ穴は不要で、市販のタップ(細目)を使用したねじ穴に挿入することができます。
イリサートは有限会社廣杉精機の登録商標です。

イリサートの特徴

  • 専用の挿入工具が必要
  • 専用のタップ穴は不要
     市販のタップ(細目)と同じ規格に挿入するため、専用のタップ穴は不要です。
  • タングが無い

ヘリコイル (Heli-CoilⓇ)

ヘリコイルは、1930年代に米国で生まれた”元祖ねじインサート”です。航空系の部品など、軽量かつ強度が必要な場面において、プラスチックやアルミの弱点である”ねじ山の弱さ”を補強する技術としてヘリコイルが生まれました。日本ではあまり馴染のない呼称ですが、米国では有名です。

Heli-CoilⓇはアメリカの工具メーカー「Stanley Black&Decker」の登録商標です。日本におけるヘリコイルの輸入については、同社の100%子会社であるポップリベット・ファスナーが行っているようです。(2021年現在)

図面指示にねじインサート挿入「M4x1.5D」と記載。このDとは?

Dは深さの表記です。ねじ径×Dがタップ深さの数値になりますので、それに適したインサートを用意する必要があります。

 例:M4×1.5Dの場合、深さは6mm(4×1.5)
   M8×2Dの場合、深さは16mm(8×2)

基本的には1D、1.5D、2Dの3種類です。

その他のねじ補強

インサートナット

こちらは”ねじインサート”とは少し違いますが、同じようにねじ穴を補強するための挿入型のめねじです。はんだごてによる熱圧入、もしくはポンチ+ハンマーによって圧入します。主に熱可塑性樹脂に対して用いられます。

インサートナットのイメージCG