製品開発では、試作品の製作だけでなく、量産前の機能検証や少量生産が必要になる場面があります。しかし、射出成形は金型の製作コストや納期が大きく、小ロット生産には不向きな場合があります。
そこで活用されるのが、バキュームキャスティング(Vacuum Casting/真空注型)です。
バキュームキャスティングは、シリコン型とポリウレタン樹脂などを使用し、真空環境下で成形する製造方法です。射出成形に近い外観や質感を再現でき、試作品から少量生産まで幅広く対応できます。
今回は、バキュームキャスティングの仕組みや製造工程、使用する材料、メリットと注意点について解説します。
1. バキュームキャスティングとは?

バキュームキャスティングは、マスターモデルをもとにシリコン型を製作し、その型に液状の樹脂を注入して製品を成形する技術です。
最大の特徴は、高価な金属製金型を必要とせず、比較的低コストで複数の同一パーツを製作できることです。
マスターモデルには、3DプリントやCNC加工で製作した原型を使用します。原型の表面を研磨・仕上げした後、シリコン型を作成し、真空環境で樹脂を注型します。
製作したシリコン型は複数回使用できるため、1個の試作品だけでなく、10〜50個程度の小ロット生産にも適しています。条件によっては最大500個程度の生産にも活用できます。
2. バキュームキャスティングの製造工程
基本的な製造工程は以下のとおりです。
3Dモデル設計 → マスターモデル製作 → 表面仕上げ → シリコン型製作 → 真空注型 → 脱型・後処理
① マスターモデルの製作
まず、製品の3Dデータをもとに原型となるマスターモデルを製作します。
主な製作方法は以下の2種類です。
- 3Dプリント: 複雑な形状や細かなディテールを再現しやすく、試作に適しています。
- CNC加工: 高い寸法精度や表面品質が求められる原型の製作に適しています。
マスターモデルの表面状態は、最終製品の品質にも影響します。必要に応じて研磨や塗装などの表面処理を行います。
② シリコン型の製作
完成したマスターモデルをシリコンで覆い、硬化させて型を製作します。
シリコン型は柔軟性があるため、複雑な形状やアンダーカットを含む部品でも、比較的容易に取り出せるのが特徴です。
また、原型の細かなディテールや表面テクスチャも再現できます。
③ 真空注型
製作したシリコン型に液状の樹脂を注入します。
この工程では、真空環境を利用して樹脂内部や型の空気を除去し、気泡や充填不良の発生を抑えます。
樹脂を混合・脱泡した後、型に注入し、所定の条件で硬化させます。
④ 脱型・後処理
樹脂が硬化したらシリコン型から製品を取り出します。
その後、ゲートやバリの除去、研磨、塗装などの後処理を行い、最終製品に仕上げます。
3. バキュームキャスティングのメリット
小ロット生産に適している
射出成形では金属製金型の製作が必要になるため、初期費用が高額になりがちです。
一方、バキュームキャスティングでは比較的安価にシリコン型を製作できます。
そのため、量産前の試作品や10〜50個程度の小ロット生産など、金型投資を抑えたいケースに適しています。
高いディテール再現性
シリコン型は柔軟性と高い形状再現性を備えており、マスターモデルの細かな形状や表面テクスチャを転写できます。
外観品質が重視される製品モックアップやプレゼンテーション用モデルにも適しています。
多様な樹脂材料に対応
使用するポリウレタン樹脂を変更することで、さまざまな材料特性を再現できます。
硬質プラスチックから柔軟なゴム状材料、透明材料まで選択でき、用途に合わせた試作品を製作できます。
4. バキュームキャスティングで使用する材料
バキュームキャスティングでは、主にポリウレタン系の注型樹脂が使用されます。
代表的な材料の特徴は以下のとおりです。
| 材料の再現対象 | 主な用途 |
|---|---|
| ABSライク樹脂 | 製品筐体・機構部品 |
| PPライク樹脂 | ケース・機能部品 |
| PCライク樹脂 | 透明カバー・耐衝撃部品 |
| ゴムライク樹脂 | パッキン・グリップ |
| 透明樹脂 | レンズ・透明カバー・意匠部品 |
材料を選定する際は、硬度(Shore Hardness)、引張強度、耐熱性、柔軟性、透明度などを確認することが重要です。
なお、これらはあくまで各材料を模擬した樹脂であり、実際のABSやPP、PCと完全に同じ物性を持つわけではありません。
5. バキュームキャスティングと他の製造方法の違い
試作品や小ロット部品を製作する場合、3Dプリント、CNC加工、射出成形などの選択肢があります。
それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 製造方法 | 主な特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
| 3Dプリント | 金型不要・形状自由度が高い | 初期試作・複雑形状 |
| CNC加工 | 高い寸法精度・材料選択の幅 | 高精度部品・原型 |
| バキュームキャスティング | 小ロット向け・表面品質が高い | 試作・少量生産 |
| 射出成形 | 大量生産時の単価を抑えやすい | 中〜大量生産 |
バキュームキャスティングは、3Dプリントで原型を製作した後、同じ形状の部品を複数個必要とする場合に特に有効です。
6. 設計時に注意したいポイント
バキュームキャスティングで品質の高い部品を製作するには、設計段階からいくつかのポイントを考慮する必要があります。
- 肉厚: 極端に薄い部分や肉厚の急激な変化は、充填不良や硬化時の問題につながる可能性があります。
- 抜きやすさ: アンダーカットや複雑な形状はシリコン型の分割方法を考慮して設計します。
- パーティングライン: 型の分割位置を適切に設定し、製品表面への影響を抑えます。
- エアベント: 空気が抜ける経路を確保し、気泡や充填不良を防ぎます。
- インサート: 金属部品などを組み込む場合は、注型工程での固定方法を検討します。
特に複雑な形状では、型の構造や樹脂の流動性を考慮した設計が重要になります。
7. バキュームキャスティングの活用分野
バキュームキャスティングは、さまざまな業界の製品開発で利用されています。
- 家電・電子機器: 筐体、ボタン、操作パネルなどの試作
- 自動車: 内装パーツ、トリム部品、機能検証用パーツ
- 医療機器: 人間工学に基づいた形状確認用モデルや試作品
- 工業製品: 機構部品、組み立て検証用パーツ
- 製品デザイン: 外観確認用モックアップ、プレゼンテーションモデル
射出成形用の金型を製作する前に、実際の製品に近い外観や機能を持つ部品を用意できるため、開発初期から量産前の検証まで幅広く活用できます。
まとめ
バキュームキャスティングは、シリコン型と注型樹脂を使用することで、金属製金型を必要とせずに高品質な部品を複数製作できる製造技術です。
特に、3DプリントやCNC加工で製作した原型を活用し、射出成形に移行する前の試作や小ロット生産を行いたい場合に適しています。
製品の形状、必要な数量、求める材料特性に応じて製造方法を選択することで、開発コストと製作期間の最適化につながります。
JUSTWAYでは、試作品から小ロット生産まで、製品開発に必要なさまざまな製造サービスを提供しています。
バキュームキャスティングを含む製造方法を検討する際は、製品の用途や必要な数量に合わせて最適な加工方法を選択することが重要です。
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