合金の添加元素が与える影響について 炭素,クロム,ニッケル,マンガン,などの元素が金属に与える影響について

鋼材の98%は鉄(Fe)でできておりますが、その他に微量に含まれる元素は材料の特性に大きな影響を与えます。

鉄鋼材料には炭素・マンガン・シリコン・リン・硫黄といった5つの元素が混ざっています。
その鉄鋼材料にニッケルやクロムなどの元素を添加することにより、その元素の特徴を生かして鉄鋼材料の弱点を克服したり、強度などを上昇させた合金鋼を生み出す事ができます。

それらの元素の種類と特徴を見ていきましょう。

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元素の一覧とその影響

5大元素

炭素、シリコン、マンガン、リン、硫黄は鉄鋼に必ず含まれる5大元素と言われる元素です。

  • 炭素(C)
     機械的性質に最も影響を与える重要な元素です。焼入れ性を向上し、強度を上昇させます。炭素量が焼入れ時の最高硬度に影響するため、熱処理で硬度を上げたい場合は炭素が0.4%以上の材料が適しています。炭素が0.3%以下の場合は熱処理を行っても硬度がほとんど上がりません。熱処理時の最高硬度は炭素量0.6%程度で頭打ちになり、それ以上多くても耐摩耗性があがるだけで最高硬度は上昇しません。
    また、炭素が多いと靭性と延性が低下し溶接性も悪くなります。
  • シリコン(Si)
     0.5%以下でフェライトに固溶し、強度を上げます。ケイ素(珪素)とも言います。
  • マンガン(Mn)
     焼入れ性を著しく向上させるため熱処理には不可欠な元素です。また、強度を向上させる働きもあります。溶接性・靭性の悪影響は炭素よりも少ないです。
  • リン(P)
     0℃以下の低温下での靭性・溶接性を損ないます。基本的には有害なため排除したい元素ではありますが、やむなく残留してしまう元素です。
  • 硫黄(S)
     900℃程度の高温下での靭性・溶接性・加工性を損ないます。ただし、切削時の切子は排出しやすくなるため切削性は向上します。リンと同じく有害な元素ですが、切削性を向上させるために敢えて添加する場合もあります。快削真鍮などが一例です。

その他の添加元素

  • 銅(Cu)
     耐候性を向上させるため、耐候性が必要な合金に必要な元素といえます。
  • ニッケル(Ni)
     強度と靭性を向上させます。
  • クロム(Cr)
     焼入れ性・耐候性・耐食性を向上させます。耐食性が重要な材料にはクロムの添加が不可欠といえます。
  • チタン(Ti)
     微量の添加で靭性が向上します。
  • モリブデン(Mo)
     耐摩耗性・高温強度を向上させ、焼き戻し脆化を防止します。
  • タングステン(W)
     耐摩耗性を向上させます。
  • バナジウム(V)
     耐摩耗性を向上させます。
  • 窒素(N)
     靭性を向上させます。
  • 亜鉛(Zn)
     耐食性、強度の改善
  • マグネシウム(Mg)
     耐食性、強度を向上させます。過剰に添加すると、逆に耐食性が低下します。

合金鋼には様々な種類があり、用途によって使い分ける必要があります。
適切な材料を選んで、合金鋼の利点を最大限に生かしましょう。

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