【材料を学ぶ】3.金属材料ー鉄鋼材料 炭素鋼やステンレスなどの合金鋼について解説

今回は金属材料の中の「鉄鋼材料」を解説していきます。
鉄鋼材料とは、アルミや銅と違い「鉄を主成分とした金属」です。

皆さんが普段街中で目にしている「鉄」も純粋な鉄=Feではありません。
ほとんどが、炭素を含む「鉄鋼」と呼ばれるものです。

また、キッチンのシンクなどに使われている「ステンレス」も鉄を主とした合金鋼に分類されます。

鉄系の材料は、あらゆる場面に幅広く使われております。
金属材料を理解していくうえで、鉄鋼の知識は一番重要であるといえます。

世の中には非常に多くの鉄鋼材料が存在しますので、その種類について解説していきます。

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鉄鋼材料の種類

鉄鋼材料は大きく分けて機械構造用鋼などの炭素鋼、ステンレスなどの合金鋼鋳鉄などに分類されます。分類方法は様々ですが、この記事では上記の図のように分けて解説していきます。

1.炭素鋼

炭素鋼は炭素(C)を含む鋼材です。炭素量によって軟鉄、硬鉄など分類されることがあります。

1) 一般構造用鋼

構造用鋼という名の通り、建築物などにも使用される鋼材です。
機械加工分野においても一般構造用圧延鋼(SS400)は非常に多く使われている有名な材料です。
安価なので大きなベースや柱などにも使われ、流通している形状も豊富です。
SS400の詳しい解説はこちら→SS400とは

一般構造用鋼

2) 機械構造用鋼

その名の通り機械部品に多用されている材料で、S45CやS50Cなどが有名です。
中でも炭素含有量が0.3%以上の材料は焼入れによって硬度を向上させることが可能です。
S45Cの詳しい解説はこちら→S45Cとは

機械構造用鋼

3) 炭素工具鋼

炭素工具鋼(SK)は炭素量が高く(0.6~1.5%程度)、工具などに使われることが多い材料です。
耐摩耗性と強度が必要な場面で使われることが多いため、主に焼入れ焼戻し処理をして使用されます。SK95などの種類があります。

2. 合金鋼

合金鋼とは、炭素鋼にひとつもしくは数種類の合金元素を添加した鋼です。さまざまな合金を添加することによって炭素鋼の弱点を改善した材料が多数存在します。いずれも、炭素鋼と比較して高価な材料です。

1) ステンレス鋼

ステンレス鋼とは、一定(10.5%以上)のクロムを添加した合金です。炭素の含有量は1.2%以下と定義されております。クロムを添加することによって不働態被膜という薄い被膜が形成され、鉄が錆びることを防ぎます。

2) 合金工具鋼

合金工具鋼とは、炭素工具鋼(SK)にクロムタングステンモリブデンバナジウムニッケルなどを添加して性能を向上させた合金です。大きく分けてSKSとSKDの2種類があります。

  • SKS(Steel Kougu Special)
    冷間金型、切削工具、耐衝撃用工具を用途とした合金鋼です。SKS3などの種類があります。
  • SKD(Steel Kougu Dies)
    主に熱間金型用として使われる合金工具鋼でダイス鋼とも呼ばれます。熱処理変化が小さいため、高温での使用に適しています。SKD11などの種類があり、耐摩耗性や耐衝撃性に優れています。

3) 高速工具鋼

高速工具鋼には4%程度のクロムを含み、その他の添加物などによって分類されます。
SKH(Steel Kougu Highspeed)、ハイス鋼とも呼ばれます。
切削工具や金型等に用いられることが多く、靭性に優れています。
ハイス鋼は、ダイス鋼よりもさらに高価な材料です。

  • タングステン系(W系)
    タングステンを添加したハイス鋼です。耐摩耗性に優れ、切削工具などに主に使われます。
    SKH2などの種類があります。
  • モリブデン系(Mo系)
    5%程度のモリブデンと6%程度のタングステンを添加したハイス鋼です。
    靭性を必要とする工具、タップ、リーマやプレス金型にも使われます。
    SKH51などの種類があり、最近ではこのモリブデン系の使用が多くなっています。
  • 粉末ハイス
    粉末状の金属を焼結したハイスです。金属組織が緻密で、耐摩耗性や靭性、工具寿命に優れています。SKH40などの種類があります。

4) 構造用合金鋼

構造用合金鋼は、0.1~0.5%の炭素を含む鋼にクロムやニッケルなどを加えた合金で靭性などを向上させています。クロム、モリブデンを含むSCM材、ニッケル、クロムを含むSNC材などがあります。

ちなみにニッケルは高価なため、ニッケルが添加されている合金は比較的高価になる傾向があります。

  • クロムモリブデン鋼(SCM)
    1.2%以下のクロム、0.45%以下のモリブデンを含有しています。焼入れ性に優れており、軸やボルトなどに用いられています。引張強度は830~1130MPa程度。
  • ニッケルクロム鋼(SNC)
    3.5%以下のニッケル、1.0%以下のクロムを含有しています。焼入れ性がよく、靭性もあります。引張強度は700~1000MPa程度。しかし、焼戻し脆さがあるという欠点があるので、SNCM材の方が多く使用されています。
  • ニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM)
    4.5%以下のニッケル、4.8%以下のクロムを含有する合金にモリブデンを添加しております。モリブデンによりSNC材よりも焼入れ性が大きく向上しており、焼戻し脆さも少ない材料です。引張強度は830~1180MPa程度。

3. その他合金

1) 超硬

超硬は、炭化タングステン、コバルトなどを混合して焼結した合金です。非常に硬度が高く、高温でも軟化せず高速切削が可能なため、切削工具のチップなどに用いられます。とても高価であり、通常の部品材料として使用されることは、まずありません。

耐摩耗性もありますが、ハイス鋼に比べると靭性は劣ります。

2) ばね鋼(SUP)

弾性・疲労強度が高く、熱間成形用ばねとして使われる材料であり、焼入れ焼戻しによって強度を出します。主にトーションバーや板ばねなどに使用されます。”ばね鋼”とは言うものの、一般的な冷間成形用ばねで用いられるのは硬鉄線(SW)ピアノ線(SWP)です。

4. 鋳鉄

鋳鉄は古くから使用されている金属材料であり、2%以上の炭素を含有しています。
鋳鉄は鋳造で用いられる鉄の事を指し、溶かして型に流し込み、固めることで材料が作られます。身近で言うと、マンホールの蓋などが鋳鉄でできております。
また、工作機械のベースなどにも用いられています。

  • ねずみ鋳鉄(FC)
    片状黒鉛鋳鉄ともよばれる鋳鉄で、振動を吸収する能力が高く耐摩耗性にも優れています。軸受けや歯車などの耐摩耗部品として使われることが多いです。FC250などの材料があります。(250は引張強度250N/mm^2を表す)
  • 球状黒鉛鋳鉄(FCD)
    FC材が片状黒鉛組織であるのに対し、FCDはMg添加によって黒鉛が球状の組織になっています。FC材に比べ、延性・靭性に優れた材料で、機械部品に多く使われています。

総括

この記事では金属材料の鉄鋼材料について解説していきました。用途や性質によって様々な使い分けをしていることがわかります。次回は非鉄金属材料について解説していきます。

【材料を学ぶ】4.金属材料ー非鉄金属 アルミ合金、銅合金、チタンなどについて解説