PCBWayの真空鋳造(Vacuum Casting)サービスは、シリコン型を用いた複製技術で、外装パーツや機構部品の少量生産・試作に適した選択肢です。3Dプリントでは再現が難しい柔軟性や強度、質感のある部品を、短納期かつ高精度で製造できる点が特徴です。
射出成形に近い外観と性能を持つプロトタイプを、比較的低コスト・短期間で手に入れることができるため、製品化前の機能確認やユーザーテスト、展示用モックアップの作成など、幅広いシーンで活用されています。
技術仕様
項目 | 内容 |
---|---|
標準リードタイム | 最大10個までで15営業日以内 |
寸法精度 | ±0.3%(100mm未満のパーツは±0.3mm) |
最小肉厚 | 0.75mm以上(推奨:1.5mm以上) |
最大サイズ | 1900 × 900 × 750 mm |
対応数量 | 1型あたり最大25個の複製が可能 |
表面仕上げ | 射出成形に匹敵する滑らかで高品質な外観 |
真空鋳造のメリット
短納期での対応が可能
最短7〜10日程度で納品できるため、開発スピードの向上や展示・検証などタイトなスケジュールにも対応できます。
精密なディテール再現
シリコン型はマスターと同等のディテールを忠実に再現。細部までこだわったデザインでも問題なく複製可能です。
素材の自由度が高い
ABSやTPU、ゴムライク素材など、さまざまな機能性樹脂に対応。強度・弾性・透明性など、用途に合わせた選択が可能です。
射出成形前のテストに最適
実際の製品と同等の仕上がりで、機能・外観の最終確認が可能。形状確認やユーザーテストにも有効です。
小ロット生産に経済的
シリコン型はアルミ型などに比べて初期費用が抑えられ、必要最低限の数量から生産できるため、スタートアップや試作品に最適。
各材料の詳細:PCBWayの真空鋳造向け素材ガイド
以下では、PCBWayの真空鋳造(Vacuum Casting)サービスで利用可能な各種素材について、技術仕様・特性・用途・コストなどの観点から詳しく解説します。
ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
アクリロニトリルブタジエンスチレン (ABS) は不透明な熱可塑性非晶質ポリマーであり、外部からの衝撃に強く、安価で強度のある硬いプラスチックを必要とする用途に最適です。金属コーティングとの組み合わせでも優れた特性を発揮します。
- コスト:★☆☆☆☆(1)
- カラー対応:Black / White / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 非常に高い耐衝撃性と剛性
- 優れた引張強度と剛性
- 良好な加工性
- 優れた寸法安定性
- 金属コーティングの密着性が良い
- 用途例:
- 自動車部品
- 家電
- スポーツ用品
- 一般消費財
- 電気部品フィッティング

POM(ポリアセタール)
POM 樹脂は、優れた寸法安定性と滑り特性が要求される用途の精密プラスチック成形部品の製造に広く使用されています。
- コスト:★☆☆☆☆(1)
- カラー対応:Black / White / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 高強度・高剛性・耐摩耗性
- 優れた寸法安定性
- 非常に低温でも高い耐衝撃性
- 短所:
- ホモポリマーは処理が難しい
- 用途例:
- 精密ギア
- 自動車部品
- OA機器
- 家電製品

ナイロン(PA)
ナイロンは非常に強度が高く、摩耗や吸湿性にも比較的強く、耐久性、耐薬品性、伸縮性、洗濯のしやすさに優れています。
用途が広く、耐久性と柔軟性に優れた素材で、シルク、ゴム、ラテックスなどの他の素材のより手頃な代替品としてよく使用されます。
高い融点と低い摩擦、さらに耐薬品性と耐摩耗性を備えた部品が必要な場合は、ナイロンプラスチックが最適です。
- コスト:★★☆☆☆(2)
- カラー対応:Black / White / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 高融点
- 低摩擦係数
- 高い引張強度
- 優れた耐薬品性・耐摩耗性
- 短所:
- 成形時の収縮が大きく、寸法精度に注意が必要
- 用途例:
- ギア、カム
- 電子機器部品
- 繊維補強部材

ポリカーボネート(PC)
ポリカーボネート(PC)は非晶質熱可塑性樹脂です。透明性が高く、耐衝撃性・耐クリープ性に優れ、幅広い温度条件下で使用できます。
耐衝撃性と透明性が求められる用途では、PC(ポリカーボネート)は必須です。PCは様々な業界で活用できます。
- コスト:★★☆☆☆(2)
- カラー対応:Black / White / Transparent / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 高透明性・高耐衝撃性
- 高温耐性・難燃性
- 幅広い温度範囲での安定性
- 短所:
- 温度上昇に伴う機械的性質の低下(特に衝撃強度)
- 用途例:
- 照明カバー
- レンズ
- 自動車部品
- 構造ブラケット

PVC(ポリ塩化ビニル)
PVC樹脂は、環境劣化、化学物質、アルカリに対する耐性に加え、優れた引張強度と硬度を備え、手頃な価格を実現しています。
他の熱可塑性プラスチックと同様に、加熱して成形可能な状態にした後、冷却し、再度加熱しても劣化しません。
硬質ポリマーと軟質プラスチックの2つの異なる形態で使用できます。可塑化PVCは曲げることができます。軟質PVCの例としては、住宅の床材、電線の絶縁材、そして多くの場合ゴムの代替品として使用されます。
- コスト:★☆☆☆☆(1)
- カラー対応:Black / White / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 優れた耐候性・耐薬品性
- 高生産性
- 良好な耐摩耗性
- 用途例:
- ワイヤー絶縁体
- 建材
- ボトルキャップ
- パッケージ材

PE(ポリエチレン)
ポリエチレンは、多様な結晶構造を持つ熱可塑性ポリマーであり、その種類によって幅広い用途に用いられます。世界で最も広く生産されているプラスチックの一つです。
特に製品設計企業にとって非常に有用な汎用プラスチックで、PEの多様なバリエーションにより、幅広い用途に使用されています。
- コスト:★★★☆☆(3)
- カラー対応:Black / White / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 軽量で柔軟性が高い
- 耐薬品性・不浸透性・電気絶縁性に優れる
- バリエーション豊富な特性
- 用途例:
- 医療・工業用容器
- 家具
- 家電パーツ

PP(ポリプロピレン)
ポリプロピレン(PP)射出成形材料は、複数のプロピレンモノマーを複合して作られる熱可塑性付加重合ポリマーです。
消費者向け製品の包装、自動車産業を含む様々な産業向けのプラスチック部品、リビングヒンジなどの特殊装置、繊維など、様々な用途に使用されています。
ポリプロピレンは表面が比較的滑りやすいため、ギアなどの低摩擦用途や家具の接触点としての使用において、アセタール (POM) などのプラスチックの代替として使用できます。
- コスト:★☆☆☆☆(1)
- カラー対応:Black / White / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 高い化学耐性と疲労耐性
- 軽量・柔軟性あり
- 絶縁性に優れる
- 短所:
- 塩素系溶剤に対しては弱い
- 用途例:
- ヒンジ部品
- 再利用ボトル
- 玩具・収納用品

PS(ポリスチレン)
ポリスチレン (PS) プラスチックは、自然に透明な熱可塑性プラスチックで、一般的な固体プラスチックとしても、硬質フォーム材料の形でも利用できます。
その堅牢性と透明性により、自動車部品や電子機器から玩具やプラスチック製器具まで、あらゆる用途に使用できます。
- コスト:★★★☆☆(3)
- カラー対応:Black / White / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 高い透明度(88-92%)
- 良好な電気特性
- 着色性・成形性良好
- 短所:
- 脆くて耐熱性が低い
- 酸に弱く燃えやすい
- 用途例:
- 食品容器
- 家電外装
- 文具・使い捨て製品

TPU(熱可塑性ポリウレタン)
TPUは強靭で耐久性があり、洗浄が容易で、ゴムの弾力性と高い安定性が求められる用途に最適です。さらに、TPUは本質的に半透明性があるため、着色が容易で、多くの用途でさらなるメリットをもたらします。
また、優れた摩耗性、耐摩耗性、高い引張強度、引裂強度を備えています。
- コスト:★★☆☆☆(2)
- カラー対応:Black / White / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 低温柔軟性・弾性
- 耐摩耗・耐薬品性に優れる
- 加工性に優れる
- 短所:
- 硬度範囲が狭い
- 乾燥には前処理が必要
- 用途例:
- 建物断熱材
- 固形プラスチック
- 表面コーティング
- スポーツウェア

シリコンラバー(Silicone Rubber)
シリコーンゴムは、ゴム部品の製造に最適な材料です。
シリコーン骨格は、Si-O鎖の繰り返し構造で構成されており、非常に柔軟な性質を持つため、この化学構造は、広い動作温度範囲、耐候性、疎水性、生体不活性、電気絶縁性、そして長寿命といった独自の特性を備えています。
シリコンゴムは、柔軟で自己剥離性の金型材料が必要な用途、具体的にはラピッドプロトタイプツール、ポリウレタン鋳造、一般的なシリコン金型製作に広く使用されています。
- コスト:★★★☆☆(3)
- カラー対応:Black / White / Gray / Red / Blue / Green / Yellow
- 素材タイプ:Plastic(Rubber)
- プロセス適合性:Vacuum Casting
- 利点:
- 耐久性、強度に優れる
- 柔軟で成形性が良い
- 収縮率が低く、離型剤が不要
- 用途例:
- 医療機器
- 自動車部品
- 電子機器
- 一般消費財

用途別:真空鋳造マテリアル選定ガイド
1. 耐衝撃性・機械強度が必要な場合
推奨材料 | 特長 |
---|---|
ABS | 衝撃強度と剛性に優れ、電子機器や自動車部品など幅広い用途に適用可能。加工性も高く、色展開も豊富。 |
POM(アセタール) | 高剛性・耐摩耗・耐薬品性があり、精密機械部品に最適。滑り性も高いため、可動部にも使いやすい。 |
Nylon(ナイロン) | 高い融点と耐薬品性、摩耗耐性に優れ、ギアや耐久性を要する部品に適する。ただし収縮に注意。 |
2. 透明または高い視認性が求められる場合
推奨材料 | 特長 |
---|---|
Polycarbonate(PC) | 高い透明性と耐衝撃性を兼ね備え、照明部品や筐体カバーなどに最適。耐熱性も高く、構造部品にも使える。 |
Polystyrene(PS) | 光学性能が88~92%と高く、コストを抑えた透明モデルに最適。加工性も良好。 |
3. 柔軟性・弾性が必要な場合
推奨材料 | 特長 |
---|---|
TPU(熱可塑性ポリウレタン) | ゴムのような柔軟性と耐摩耗性を持ち、フィット性や柔らかさを必要とする製品に最適。 |
Rubber(シリコンゴム) | 耐熱性・耐候性に優れ、医療・家電など柔軟性を求める分野で活躍。自己離型性が高く、型としても使用される。 |
4. コスト重視&一般用途
推奨材料 | 特長 |
---|---|
ABS | 加工性が非常に高く、真空鋳造プロセスにも適している 強度や剛性がバランス良く備わっており、試作から実製品まで幅広く対応可能 |
PP(ポリプロピレン) | 安価かつ軽量で、耐薬品性と疲労耐性を持つ。日用品や医療容器などに最適。 |
PVC | 耐薬品性・コストのバランスに優れ、包装や配線材など幅広い用途に対応。 |
5. 耐候性・化学環境での使用
推奨材料 | 特長 |
---|---|
Rubber(シリコン) | 高温・低温・紫外線などの厳しい環境に耐える。医療、航空、アウトドア機器向け。 |
Nylon | 化学薬品、摩耗に強く、長寿命設計に適する。 |
備考:素材選定のポイント
- 試作段階では、「最終製品に近い性質」を持つ素材を選定することで、設計検証の精度が向上します。
- 量産前の用途テストやフィーリング確認には、TPUやRubberといった「実際の使用感に近い柔軟素材」が効果的です。
- コスト制限がある場合、ABS・PP・PVCなどの低コスト材料を使用して、まず形状や構造の検証を進めるのが効率的です。
総括:真空鋳造と材料選定で、より高精度な試作と小ロット製造を実現
PCBWayが提供する真空鋳造(Vacuum Casting)サービスは、短納期・高精度・コストパフォーマンスを兼ね備えたプロトタイピング手法です。最大25個までの小ロット試作をスピーディに、しかも射出成形に匹敵する品質で実現できるのが大きな強みです。
さらに、ABSやPOM、PC、TPUなど10種類以上の多彩な材料に対応しており、それぞれの特性に応じた柔軟な選定が可能です。試作の段階から実製品に近いフィーリングを得ることができ、機能評価や顧客プレゼンテーションにも最適です。
設計者にとって、材料選定は製品の完成度や信頼性を左右する非常に重要な要素です。本記事で紹介したマテリアルの特性ガイドを参考に、製品に最も適した素材を選び、真空鋳造のポテンシャルを最大限に活用していただければと思います。
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