以前の記事でお伝えしたとおり、PCBWayのFDM方式PLA素材のうち「白色」が恒久的に値下げされました。これはコストパフォーマンスを重視するユーザーにとって非常に嬉しいニュースです。
今回は、実際に白PLA素材を使用して3Dプリントしたモデルのレビューをお届けします。依頼したのは、ローポリゴンスタイルの犬のオブジェ(画像参照)。エッジのシャープさや積層痕の目立ち方、表面の清潔感など、ディテールの出方に注目しながらレビューしていきます。
元データはこちらからダウンロードできます。
※ライセンス条件の確認などは自己責任にて宜しくお願い致します。
https://www.printables.com/model/35662-low-poly-dog
■ 使用素材と印刷方式について
まず今回使用した素材は、PCBWayの「PLA(白)」です。
PLAはFDM方式と極めて相性のよい素材です。FDMは材料を加熱しながらノズルで押し出して積層していく方式で、PLAは比較的低温(約200〜220℃)で溶融可能なため、ノズル詰まりやワーピングのリスクが少なく、安定した造形が可能です。
また、PLAは収縮率が低いため、寸法精度が求められるパーツにも向いています。これらの特徴により、特に初めて3Dプリントを依頼する方や、細かいディテールを表現したい用途において理想的な素材と言えるでしょう。
今回は、以下のような基本パラメータで発注しました:
- インフィル:20%
- 表面仕上げ:未研磨(出荷状態のまま)
- 塗装・後加工なし
■ ローポリ犬オブジェの仕上がり
今回出力をお願いしたのは、「ローポリ風」の犬のオブジェです。三角形ポリゴンの面構成が視覚的に面白く、造形精度を見極めるのに適しています。
▼ エッジの出方
ローポリのエッジラインが非常にくっきりしており、FDM方式としては予想以上に輪郭が明確です。エッジがダレることなく、シャープな立体感がそのまま再現されている点が好印象です。

▼ 積層痕について
FDM方式特有の積層痕は確かに見られますが、全体として均一で、ズレやバリはありません。肉眼で至近距離から見ればわかるものの、展示用途や観賞用としては全く問題のないクオリティです。

▼ サポート除去跡
細かい脚部などの造形にサポートが必要でしたが、除去跡は比較的きれいに処理されています。サポート除去後の表面も大きな破損や粗れはなく、むしろ造形側での自動設定の最適化が効いていると感じました。

▼ 色味と清潔感
白PLAならではの「清潔感」や「存在感」が非常に強く、ディスプレイ映えします。特にこのようなローポリの幾何学的フォルムとは非常に相性がよく、シンプルながらも印象的な仕上がりになりました。
■ モデル依頼の注意点と対策
3Dプリンターを所有していない人は、3Dモデルの作成方法によって造形にどのような影響が出るか予測できないかと思います。そこで、以下のポイントに気を付けてモデルを作成することをお勧めします。
- サポート跡の処理:モデルによってはサポート材との接触面に若干の荒れが生じます。紙やすりやニッパーで軽く整えることで見た目を改善できます。
- 積層方向の選定:造形方向によってエッジの精度や面の滑らかさが変わるため、配置の工夫も重要です。
- ホワイトカラーの管理:白色は光の反射や表面の汚れが目立ちやすいため、手袋着用や清潔な作業環境が推奨されます。
PCBWay側の出力品質管理がしっかりしていたこともあり、こうした問題は最小限に抑えられていましたが、上記の点を押さえておくことで、より高品質なプリントが期待できます。
■ 価格と納期について
価格面においては、今回の白PLAの恒久値下げによって、同等サイズの他素材よりも約20~30%程度リーズナブルになっていました。これにより、複数個のオブジェをまとめて試作・展示用に造形する際も、コストを大幅に抑えることが可能です。
納期についてですが、中国からの発送ながらもスムーズでトラッキングや梱包状態も問題なく、海外製造を不安視している方にもおすすめできます。
■ モデル作成時の注意点(3Dプリンターを持っていない方へ)
3Dプリンターを持っていなくても、BlenderなどでモデリングしたデータをPCBWayで簡単にプリント依頼することができます。ただし、プリンターの仕様を踏まえたモデリングが必要です。以下のポイントを押さえておくと、失敗のない高品質な仕上がりが期待できます。
- サポートが必要な形状を避ける
出力時に宙に浮いた形状(オーバーハング)があると、サポート材が自動的に生成されます。サポートが接触する面はややザラつきが残ることがあり、後処理も必要になります。可能な限り、斜め45度以内の緩やかな傾斜や、下から順に積み上がる構造を意識しましょう。 - 極端に薄い部位を避ける
FDM方式は細かい造形が苦手なため、0.8mm以下の極端に薄いパーツは破損しやすく、出力も不安定になります。最低でも1.2〜1.5mm以上の肉厚を確保することで、安定した仕上がりになります。 - 出力方向を意識してモデリングする
積層方式のため、造形方向に対して垂直な面は積層痕が出やすくなります。特に曲面部分や目立つ表面には注意し、どの向きで出力されると美しく仕上がるかを考えて設計することが重要です。
これらのポイントをあらかじめ意識しておくことで、より完成度の高い造形物に仕上がり、仕上げの手間も軽減されます。データを送る前にチェックしておくと安心です。
■ 総評:品質・価格ともに非常に優秀
PLAは安価で加工が容易なため、プロトタイプやデザインモックアップなど「形状を確認したい用途」に最適な素材です。特に白PLAはビジュアル面でも高級感があり、展示物や装飾品としてそのまま使っても十分に映えます。
今回のローポリ犬オブジェのように、エッジが重要な造形にも問題なく対応しており、FDM方式としての精度・再現性も優秀です。値下げによってコストパフォーマンスがさらに向上した今こそ、試してみる価値がある素材だと実感しました。
皆さんも、ぜひPCBWayの3DプリントサービスでPLAの造形を依頼してみてはいかがでしょうか!

