皆さんは、お仕事で2DCADを使っていますか?
企業が使っているものだと「AutoCAD」「DraftSight」などの有料2DCADが有名ですね。
しかし「自宅でもCADの勉強がしたい」「CADを使う会社に転職したいけど使ったことがないから不安、、」「趣味で使いたい」といった人もいるのではないでしょうか。
会社で使うような有料CADを自宅で導入するのも中々ハードルが高いです。
今回は、そんな方々向けに「無料の機械製図向け2DCAD」を実際に使った感想と比較をしていきたいと思います。
※当記事においてメリットやデメリットなどの評価をさせていただいておりますが、
筆者の確認不足や勘違い、使用PCとの相性やバージョンの違いにより、事実と異なる解釈をしてしまう場合があります。十分に注意はしておりますが、万が一の場合はご容赦くださいませ。
また、フリーソフトということで“無償でソフト公開してくださっている”という点をまずは感謝させていただいた上で解説をさせていただきたいと思います。あくまで個人の感想ですのでご了承ください。
比較する2DCADソフト
さて、今回比較するのは「鍋CAD」「QCAD」「AR_CAD」「Root Pro」「Solid edge 2d drafting」の5つです。有料版があるソフトについては、無料版での比較となります。
今回は「機械系製図向け」ということで汎用CAD、機械用CADから選んでおります。jw_cadは主に建築向けということで除外しております。
まずは各ソフトの比較を一覧にてまとめました。
表の補足
- “ユーザビリティ”について
ここでは、アイコンの配置・わかりやすさ・見やすさ・無駄のなさなどを星で評価しています。利用者への配慮や効率性なども含まれます。星が多いほど精練されているソフトだと言えます。 - “初心者向け“について
ここでは、初心者が取っ付き安いかどうかということを評価しております。機能が充実していても、初心者にとっては何が何だかわかりません。星が多いほど、直感的に操作できるソフトだと言えます。 - “機能性”について
ここでは機能が豊富で様々な作業ができるかどうかを評価しております。星が多いほど、多機能なソフトだと言えます。
それでは各ソフトをひとつずつ解説していきます。
1_鍋CAD おすすめ度★★
製造の現場から生まれたCADで、今もなお更新し続けています。機械関係の2DCADとして使用している方も多いソフトです。
長所
- 直感的に操作ができる
初心者でも操作がしやすく、シンプルで使いやすいです。 - 幾何公差、バルーンなどの配置ができる
寸法記号などが豊富で、面粗度の記号や幾何公差も配置できます。
短所
- 全体的にデザインがもっさりしている
公式のHPからも見て取れますが、全体的に時代を感じる作りで、項目に無駄が多いように感じます。 - DXFとの互換性に懸念
公式のQ&Aに記載されておりましたが、”個人の作家さん”が作っているソフトなので、”無造作に更新され続けるDXF形式”に対する互換性には限界があるとのことです。無償ですのでこれは仕方がありません。
総評:簡単な機械図面はこれでOK
直感的に操作もできるので初心者にもとっつきやすく、部品図を個人でさくっと作る用途には丁度いいソフトだと思います。これから趣味で2DCADを初めてみたいという人にオススメです。
2_QCAD おすすめ度★★★
QCADはスイスの会社が開発したオープンソース(ソースコードが開示されている)のCADで、windowsだけでなくmacやLinuxでも起動できるソフトです。
長所
- シンプルで使いやすい
それなりに多機能でありつつ、シンプルでバランスのとれたCADだと思います。 - アドオン、パーツライブラリが豊富
公式サイトで様々なパーツのデータをダウンロードできます。機械であればベアリングやネジなどの図形もダウンロードして挿入することができます。図枠もあります。
短所
- 日本語での情報が少ない
有志の方によって日本語化はされておりますが、日本での認知度は若干低く、日本語での技術的な情報が少ないです。 - 幾何公差などの記号がない
データムや面粗度、幾何公差の記号などがデフォルトで入っていないので、オブジェクトを挿入するなど工夫が必要です。
総評:慣れてこそ真価を発揮する
ノーマークでしたが、パソコンにこなれている人ほど能力を発揮できる優良なソフトだと思います。オープンソースならではの成長性や可能性を感じるようなソフトでした。初心者でも扱えるレベルかと思いますが、CAD自体が初めての場合は少々とっつきずらいかもしれません。
QCADのダウンロード、使用方法などについては、こちらのサイト様を参考にさせていただきました。
【無料CADソフト「QCAD」で設計・製図 】
3_AR CAD おすすめ度★★
お絵描き感覚で使える2DCAD。住宅、建築向けソフトのメーカーである株式会社SHFが開発したソフト。機械向けというより汎用CADです。
長所
- とにかくシンプルで簡単
直感的な操作が可能で、軽い動きのソフトです。
短所
- 機能が限定的
機械製図に使うには機能がちょっと物足りないと思われます。 - 会員登録が必要
ダウンロードには無料会員登録が必要なので、ちょっとだけ面倒です。
総評:お絵描き感覚で描ける。パソコンが苦手な方にもおすすめ
筆者自身、初めてCADを触った時から1年ほど使用したことがあります。初心者にうってつけで非常に単純明快なソフトです。環境設定などを自分好みにカスタマイズすれば、趣味程度の製図であればストレスなく使えるかと思います。ただ2016年でソフトの更新は止まっているので、他ソフトとの互換性などは注意が必要です。
4_Root Pro おすすめ度★★
パソコンのソフトを開発している株式会社ルートプロが提供するCADです。
「さすがソフト系の会社が提供しているだけの事はあるな」と感じる実力派CADです。
長所
- 機能が豊富
幾何公差などの記号も豊富で、機能も充実しています。 - デザインが見やすい
デザインも精練されており、見やすさや使いやすさを追求しています。
短所
- 無料版は機能が限定的
無料版だとユーザー設定なども行えず、DXFも読み込みしかできず書き込みできません。
総評:有料版を買うべき
これは無料版を使い続けるソフトではなく、使い心地を試してから有料版を買うべきソフトだと思います。買い切りで\19,800とお買い得なので、副業レベルの運用であれば買った方がいいと思います。個人事業レベルでも導入して運用できる程度のクオリティはあるかと思います。(もちろん業種、用途によりますが)
5_solid edge 2d drafting おすすめ度★
ハイエンド3DCADの「NX」「solid edge」などでおなじみのシーメンスが提供するソフトです。この「solid edge 2d drafting」は2次元の製図に特化した無償のソフトです。
長所
- 桁違いの機能性
まずは、どう考えても無償とは思えない機能の豊富さが特徴です。少しの期間いじった程度では到底把握しきれない量の機能です。office系のソフトのような配置です。
短所
- 機能が多すぎて理解に時間がかかる
多機能すぎて、勝手を覚えるまでに非常に時間がかかります。操作性にクセもあります。 - いつ有料化するかわからない
有料化する前提で話をしていますが、「これだけ高性能のソフトをいつまでも無料にしておくわけもないのでは」というのが個人的な見解です。無料版でユーザーを集めて、皆が「よし、ようやく慣れてきたし機能性もバッチシだ!今後もこのソフト一本でやっていくぞ!」となってきたころで無償版を廃止して有料化に誘導するのが常套手段だと思います。※あくまで予想です
総評:うかつに手は出せない?
上記にある通り、せっかく慣れても有料化しそうで手が出せないのが現状です。そもそも多機能すぎる&独特の操作性なため慣れるまでが大変で、気軽に使えるソフトではありませんね。ただ性能は桁違いだと思います。
まとめ
- 趣味程度の気軽な製図、初心者はAR_CADか鍋CADがオススメ
- 自分でカスタマイズして使いこなせたらQCADは優秀
- 「無償じゃなくていいけど、高い2DCADを買うのは厳しい」という方はRootProの有料版をオススメ(有料という選択肢であればdraft sightもオススメ)
- 「難しくてもいいのでとにかく無料で高機能なCADが使いたい」という方はsolid edge 2d draftingがオススメ
学生であればAutoCAD(教育機関向け)が無償で使える
AutoCADは学生であれば無料で使用することが可能です。機能はいくらか限定されておりますが、このチャンスを使わない手はありません。AutoCADに限らずAUTODESK社の製品の多くが利用できますので、公式ホームページで一度ご確認ください。
データの確認だけならオンライン上で可能”Autodesk Viewer”
DXFデータは2Dデータにおけるデファクトスタンダード(事実上の標準)なので、DXFに対応できるかどうかという点は非常に重要です。
しかしレビューの通り、フリーソフトにはDXFとの互換性が不十分なソフトも存在します。今回はアイソメ図が離散したことしか確認しませんでしたが、データによっては寸法が抜けたり、変化したりと互換性の悪さによる深刻な不具合が出る場合もあります。そのため「お客さんのデータを確認する」などの重要な作業はできるだけフリーソフトで行わないことをお勧めします。
データや寸法を確認するだけであれば、「Autodesk Viewer」を使ってオンライン上でデータの中身を見る事ができます。サインイン(無料会員登録)の必要はありますが、DXF開発元であるAutodesk社の提供なので、正確なデータを確認できます。しかも、dxfだけでなく3dcadのデータなど非常に多くの種類のデータをオンライン上で確認できます。
サイトはこちら→オートデスクビュワー
※DXFデータを製作したソフト自体がフリーソフトだった場合、互換性は保証できません