ABSフィラメント使用時の造形トラブルを記録していきます。
しばらくは箇条書きでメモしていきます。
情報が増えてきたら記事にまとめていきます。
ABSはPLAよりも造形難度が比較的高いため、トラブルが発生しやすいです。
一般的なABSの設定温度
ノズル:210-250℃
ベッド:80-110℃
反ってラフトが剥がれてしまう
造形中にラフトがビルドプレートから剥がれてきてしまう場合の原因調査と対策。
考えられる原因と対策
- ビルドプレートが汚れている場合は掃除する
・ビルドプレートが冷えた状態でIPA(イソプロピルアルコール)などを使用しプレートの汚れを除去する。
※IPAは引火性が高いので取扱い注意です。
・ビルドプレートの温度を105℃程度まで上げた状態でスクレーパーなどを使用して汚れや付着物を除去する。
※プレートで火傷しないように注意しましょう。 - ノズルの温度、ビルドプレート温度の調整
・ABSは一般的にノズル温度約245-265℃、ビルドプレート約90-105℃ぐらいの設定が多いです。ラフトがうまく密着しない場合は、まずはビルドプレートの設定温度を5℃ずつ上げながら様子を見てみましょう。
またノズル温度が高すぎると、吐出されたフィラメントとビルドプレート及び庫内の温度差が大きくなるため、収縮による反りも大きくなってしまう可能性があります。そのため、ノズル温度は一度低めで設定して様子をみましょう。
材料メーカーによっては、ABSのガラス転移点が高い場合(105~110℃程度)もありますので、ビルドプレートを110℃程度にしてみるのもひとつの手です。
※使用するフィラメントのメーカーにより推奨温度は異なります。 - プリンタ庫内、周辺温度を高く保つ
・エンクロージャーなどで熱が放出されにくい箱型の3Dプリンタであれば、比較的造形は安定しますが、開放型の3Dプリンタだと造形物周囲の温度が下がりやすいです。プリンタ周囲を断熱できるよう疑似的なエンクロージャーなどを用意した方がいいかもしれません。 - 冷却ファンを弱める、もしくは使用しない
・スライサーの設定で冷却ファンを止めてみる、もしくはファンの出力を50%程度弱くしてみましょう。ABSは収縮率が高いため、冷却ファンにより急速に材料が冷却されると反りが発生しやすいです。
冷却ファンを止めると表層が汚くなってしまう場合は、スタート~10層目まで冷却ファンを止めるなどの調整をしてみましょう。 - 形状が薄く、長辺が長い場合
・形状が平たく長辺が長いほど反りやすい傾向があります。形状自体を見直すことが可能であれば、厚みを持たせるなどして反りにくい形状を検討してみましょう。 - ラフト形状の変更
・ラフト1層目の厚みを薄くし、吐出率が高ければ少し下げ、充填率を高くして様子をみましょう。1層目とビルドプレートが触れる面積が増えた方が比較的密着しやすくなります。 - ノズルとビルドプレートのオフセットを調整する
・Z軸のオフセットを調整して、ノズルとビルドプレートの隙間を小さくしてみるのも有効な場合があります。一層目がしっかりとビルドプレートに定着するように、吐出物の具合をみながら慎重に調整してみましょう。 - その他の対策
・ビルドプレートに専用のスティックのりを塗布する。または専用の密着スプレーを塗布する。ビルドプレートに汚れがたまりやすいですが、物理的な対策なので効果がでやすいです。
実際に反りが改善された例
・ビルドプレートに3Mのマスキングテープを貼る
・ノズル温度を245℃→230℃に変更した(その際使用したフィラメントの推奨ノズル温度は245℃-260)
・ヒートベッド温度を105℃→110℃に変更した
・冷却ファンの設定を”1層目停止、2層目以降50%”に変更した
・ノズルを新品に交換した
・ビルドプレートを交換した
・造形速度を10mm/s程度下げた
・充填率を10%程度下げた
・違うメーカーのフィラメントを試してみる
・Z軸を-0.1~0.08mm程度オフセットする(下げる)
・マスキングテープを貼らずに”のり”を使う(“3Dプリント用のり”や”しわなしPIT”など)
表面にポツポツの穴が発生する
- 充填率が低い場合
充填率をあげてみましょう。また、表層部の充填流量を105~110%程度にあげると改善されることがあります。 - 冷却ファンが停止している場合
冷却ファンを使用すると表面のホールはできにくい傾向があるようです。ただし、前述の「反り」問題は冷却ファンを使用すると発生しやすいので悩みどころです。うまく使い分けましょう。