【材料を学ぶ】2.材料がもつ特性 機械的・物理的・化学的性質を解説

前回の記事では「材料にはどのような種類があるのか」を解説しました。

今回は材料を選定する上で非常に重要な要素である「特性」を解説していきます。

それぞれの材料には、「軽い・錆びにくい・硬い」などいろいろな特性があります。
その特性は主に次のようなものがあります。

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材料の性質

1.機械的性質

機械的性質とは材料が持つ力学的特性です。
まずは難しく考えず、「材料の加工しやすさ」や「部品の耐久性」などの目安と捉えましょう。

機械的性質の中でも、強さの指標には「強度」と「剛性」があります。
ここでは簡単に説明していきます。

1) 強度

強度は材料に力を加えたときに起こる変形に対する抵抗力のことで、「降伏強さ」や「引張強度」などが指標となります。

ひとまず、「強度が高いほど材料が破損しにくい」と捉えましょう。
下記の情報はざっと目を通すだけで構いません。

弾性変形と塑性変形
  1. 強度に関する力、弾性変形と塑性変形
    材料に力を加えたときに起こる変形は大きく2種類あり、力を取り除いたときに形が元に戻る「弾性変形」と、力を取り除いても形が元に戻らない「塑性変形」があります。
    ばねが元の形に戻るのが弾性変形の一例で、プレス加工などで薄い板を変形させるのが塑性変形の一例です。この塑性変形を起こすまでに耐える力を降伏強さと呼びます。
引張試験
  1. 弾性変形→塑性変形の次に起こるのが破断(破壊)
    材料に加える力が塑性変形の範囲を超えると、やがて材料は破断します。
    この材料が破断するまでに耐える力を引張強度(引張強さ)と呼びます。

2) 剛性

剛性を簡単に説明すると、力が加わったときの変形しにくさです。
ひとまず、「剛性が高いほど変形しにくい」と捉えましょう。

剛性の指標となるのは「縦弾性係数=ヤング率」で、この係数は材料ごとに決まっております。
通常、縦弾性係数が大きい材料ほど剛性が高くなります。

3) 硬度

硬度とは物質表面の硬さであり「材料の傷つきにくさ変形のしにくさ」に関わる性質です。
硬度が高いほど摩耗や傷に強く、変形しにくくなります。
しかし、硬度と靭性は反比例の関係にあり、硬いほど衝撃を与えたときに壊れやすくなります。

  • 最も硬い物質の代表ダイヤモンドはハンマーで壊れる?
    ダイヤモンドは自然界で最も硬い物質としてよく知られていますが、ハンマーでたたくと簡単に割れてしまいます。硬度は高いので表面の摩擦やひっかき傷にはめっぽう強いですが、靭性がないため撃に対する強さは低いです。(特定方向の衝撃に弱い”へき開性”が関係しております)
  • 金属の表面硬度は上げることができ、処理によっては靭性との両立も可能
    材質にもよりますが、金属の硬度は熱処理や表面処理などによって上昇させることができます。また、浸炭焼入れなどの処理は金属の表面だけ硬度をあげ、内部は靭性を保つことが可能です。

4) 靭性(じん性)

靭性とは、破壊に対する抵抗力であり粘り強さともいわれます。

靭性が高いということは、延性があるだけでなく引張強さも大きいことを示します。
靭性がある材料は、力を加えてもすぐにブチッと切れたりせず伸びて変形していきます。

逆に靭性の低いセラミックで出来た陶器は落としたらすぐに割れてしまいます。
金属材料は一般的に靭性の高い材料として広く用いられています。

2.物理的性質

1) 比重

比重とは”比較する物質の密度“と”基準となる物質の密度“の比です。
金属などの固体は水を基準として比重を出します。

鉄の比重は鉄:水の密度比率で、アルミの場合はアルミ:水の密度比率です。

比重

この比重の数値が高い物質ほど重いと思っていただければいいです。
実際は添加される元素によって比重は多少異なります。

鉄の比重は約7.8~7.9でアルミは約2.7なので、鉄はアルミの約三倍程度重いです。
マグネシウムは実用金属の中で最も軽い材質です。

2) 熱伝導率

熱伝導とは熱が物質によって運ばれる現象の事で、熱伝導では熱が高い方から低い方へ移動します。
そしてその熱の伝わりやすさを数値で表したものが熱伝導率です。
熱伝導率が高い物質ほど、よく熱を伝えます。

銅やアルミは熱伝導率が高いため、放熱・冷却するためのヒートシンクなどによく用いられます。

3) 線膨張係数

物質は温度変化によって膨張、縮小します。
その体積の膨張の割合を温度あたりで示したものを線膨張係数(熱膨張係数)と呼びます。

電車のレールには隙間が設けられていますが、これは夏場の温度上昇で鉄が膨張し、鉄でできたレールが歪むのを防ぐためです。

4) 導電率

導電率は電気の通しやすさです。
銀、銅は導電率が非常に高く、特に銅は電線や電気ケーブルなどに多く使用されています。

5) 耐熱性

耐熱性とは、高温下の状況でも変質・変形しない性質のことです。
耐熱性と一口にいっても、長時間高温に耐える力や、高温下での衝撃に耐える力など、さまざまな観点から評価されます。

6) 磁性

磁性が強い金属は磁石にくっつきます。SUS304などのステンレスは非磁性ですが、板金加工などによって加工硬化を起こすと磁性を帯びることがあります。
また金属から磁性を除去する脱磁機という機械もあります。

3.化学的性質

1) 耐食性

耐食性とは腐食(さび)に対する強さです。洗い場のシンクなどにも使われるステンレスは錆に強い合金として有名です。あまり錆に強くない鉄なども、表面処理でめっきや塗装などを施すことによって耐食性を改善させることができます。

総括

この記事では材料がもつ性質について解説していきました。
材料の特徴を把握し、適切な場所に使用していくことが重要です。

次回は金属材料の鉄系材料について解説していきます。
【材料を学ぶ】3.金属材料 鉄鋼材料の種類、炭素鋼や合金鋼などについて解説