【熱処理】焼入れ・焼戻しとは?炭素を含む鋼材や合金を硬くする処理の意味や特徴を解説

熱処理 熱処理

焼入れとは「炭素を含んだ鋼材」を「オーステナイト組織が生成されるまで」加熱し、その後急速に冷却をしマルテンサイト組織を得ることで、鋼を硬くする処理です。

しかし、そのままでは金属は硬く脆い状態になってしまうため、その後「焼き戻し」によって靭性を回復させ粘り強くするのが一般的です。

※あくまで一例です


上記はあくまで一例ですが、基本的に焼入れ・焼き戻しをするのは炭素0.3%以上の鉄合金材料です。

上記は焼入れできない材料の一例です。ちなみに、S15Cなどの低炭素鋼は「浸炭焼入れ」という処理を行う場合があります。浸炭焼入れは、表面に炭素を拡散させた後、焼入れをして表層の硬度だけを上げる処理です。

アルミ合金や銅合金を焼入れ焼き戻しすることはありません。ただし、材料を製造する段階で時効硬化処理などの”熱処理”を施すものもあります。

焼入れ とは

焼入れは炭素を一定量(0.3%)以上含む炭素鋼に施される処理で、オーステナイト組織が形成されるまで加熱したのちに水や油で急冷し、マルテンサイト組織を生成させます。このマルテンサイト組織を得ることによって炭素鋼は硬度を上げる事ができます。

また、焼入れ温度が低すぎると十分に硬度が出ず、逆に温度が高すぎると靭性が低下してしまいます。

焼入れ焼戻し


処理後の硬度を決めるのは炭素量

焼入れによって硬化をする上で最も重要なのは炭素量です。
この炭素量によって、処理後の硬度の上限が決まってきます。
ただし、一般的には炭素量0.6%程度で頭打ちと言われており、それ以上炭素量があっても最大硬度は変わりません。ただし、炭素量が多いほど耐摩耗性は向上します。

焼入れ性とは,焼入れにおいて重要な要素

焼入れの硬度を左右するのは炭素(C)量ですが「炭素以外の添加元素」によって焼入れ性が向上します。焼入れ性とは「焼入れ時の表面硬化のしやすさ」そして「表層から深い箇所まで焼きが入るかどうか=硬化深度の深さ」を示すものです。

焼入れ性に大きな影響を与える元素は以下の通りです。

  • マンガン(Mn)
     焼入れ性を大きく向上させます。
  • クロム(Cr)
     焼入れ性の向上。浸炭の促進の効果もあります。
  • モリブデン(Mo)
     焼きの入る深さを向上。高温における結晶粒の肥大化も防止します。

焼戻し とは

焼入れによってできたマルテンサイトは硬い組織ですが脆く不安定です。そこで、金属を加熱した後に適度な速度で冷却し靭性を回復させる「焼戻し処理」をおこないます。

また、この焼戻しには低温焼き戻し高温焼戻しがあります。

  • 低温焼戻し
     高い硬さを保持するために150~200℃程度で焼戻しを行います。耐摩耗性が必要な部品や工具などに用いられます。
  • 高温焼戻し
     500~600℃程度で焼戻しを行い、硬度と靭性のバランスを保ちます。一般的にはこの高温焼戻しが多く用いられます。

焼入れの長所・メリット

  • 材料の硬度が上昇し、耐摩耗性や強度が向上する

焼入れの短所・デメリット

  • 温度管理に注意が必要
     適切な温度で処理をしなければ、効果が得られません。
  • 歪や割れに注意が必要
     高精度を要する部品などは、焼入れ焼戻し後に研磨などの仕上げが必要な場合があります。