材料に施す表面処理にはさまざまな種類があります。
金属は加工した後そのまま使うこともできるのですが、耐食性や耐摩耗性などが低いと、すぐに錆びたり摩耗したりしてしまいます。
例えば、鉄鋼は酸素と結びつき、水分を取り込んで酸化しようとする働きがあります。
不働態被膜があるステンレス鋼の場合は酸化による錆を防ぐことができますが、通常の鉄鋼や合金鋼は大気中で錆びてしまいます。
そのため、めっきや塗装をすることで錆から防ぐ必要性があります。
他にも、アルミ合金の中で最も汎用性の高い「A5052」は硬度が低く傷つきやすいという弱点があります。こういった弱点を補うために、硬質アルマイトなどの処理を行うことがあります。
処理をすることで、傷を防止した上で耐食性も向上させることができます。
このように、様々な金属の弱点を補い、強度や耐久性などを上げたりするのが表面処理です。
またそれだけでなく、着色したり外観を向上させたりする「装飾」を目的とする場合もあります。
処理・表面処理の全体像
処理といっても非常にさまざまな種類があり、分類方法によっても全体像は変わってきます。
当記事では”わかりやすさ”を優先し、処理を大分類しました。
ここでは材料の表面に施す”めっき”などの表面処理と、焼入れなどの熱処理は別のものと分類させていただきます。熱処理についてはまた改めて解説いたします。
表面処理の目的
性能の向上
- 耐食性の向上(錆びにくくする)
鉄系の合金など、金属単体では錆びやすいものの耐食性を上げる事ができます。 - 耐摩耗性の向上(削れにくくする)
アルミなど削れやすい金属の耐摩耗性を上げる事ができます。 - 耐衝撃性の向上(壊れにくくする)
- 熱伝導性の向上
- 表面性の向上
- 密着性の向上
装飾
- 色を付ける
- 光沢を出す
金属に光沢をもたせることができます。 - 模様をつける
シボ加工などにより、材料の表面にさまざまな模様をつける事ができます。また、表面を荒らすことによって反射させたくない材料に艶消しを施すこともできます。
表面処理の種類
金属皮膜処理
- めっき
めっきは金属の表面に亜鉛などの被膜を形成し、錆を防いだり装飾としても使われます。めっきには電気を使用した電気めっき、電気を使用しない無電解めっきなどがあります。 - 溶射
溶射は、溶射材(金属やセラミックスなど)を溶融し噴射することによって、処理する材料の表面に被膜を形成させます。溶射材により効果は異なりますが、主に防食や耐摩耗性の向上に用いられることが多いです。溶射は金属だけでなく、セラミックスやプラスチック、木など非常に幅広い材料に施すことが可能です。
非金属皮膜処理
- 塗装
塗装といえば住宅など建築系でお馴染みの処理ですが、金属にも塗装は用いられます。色を付けるのはもちろんのこと、防錆の目的でも使用されます。メラミン樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いる焼付け塗装、粉体塗料を用いる粉体塗装などがあります。 - ライニング
ライニングとは、物体の表面にゴムやフッ素樹脂など比較的厚い被膜を貼り付ける処理です。主に腐食や摩耗などから保護する目的として用いられます。
コーティング
- チタンコーティング
チタン材料を主としたコーティングで、耐摩耗性などを飛躍的に向上させることができます。切削工具などだけでなく、医療分野や金型部品などにも用いられます。炭化チタンコーティング(TiC処理)や窒化チタンコーティング(TiN処理)などの種類があります。 - テフロンコーティング
フッ素樹脂を使用したコーティングで、非粘着性、すべり特性、電気特性、耐摩耗性などを有しております。身近なところではフライパンにもテフロンコーティングがよく施されています。すべり性に優れたPTFEや耐薬品性に優れたETFEなどの種類があります。 - DLCコーティング(Diamond-like-carbon)
金属の表面にナノレベルのコーティングを施し、耐摩耗性や耐衝撃性、低摩擦などの特性を得る処理です。切削工具などに用いられます。
その他
- 陽極酸化処理(アルマイト)
アルミに施す処理であり、人工的に酸化被膜を形成させる処理です。強度や防食性を向上させることができるだけでなく、青や赤など様々な色に着色するカラーアルマイトという処理も存在します。 - 化成処理
処理剤を使用して金属の表面に化学反応おこし、被膜を形成させ耐食性などを向上させる処理です。リン酸塩皮膜処理(パーカーライジング)、黒染め、クロメート処理などが存在します。 - シボ加工
エッチングによって金属の表面にシワのような模様をつける処理です。ざらざらした手触りの梨地処理や光の反射を抑える艶消しといったものがあります。また、シボ加工にはプレスやサンドブラストで模様をつける方法もあります。 - ショットピーニング
ショットと呼ばれる粒状の物質を加工物に高速で衝突させる処理です。衝突により加工硬化を起こし、加工物の表面を硬化させることができます。似た処理でサンドブラストというものがありますが、こちらは主に表面の研磨などを目的として使用されます。
総括
今回は処理の全体像を解説させていただきました。
処理をうまく選定することによって、材料の弱点を補い、さまざまな環境下において使用できるようにすることができます。
次回は、熱処理について解説していきます。