S50Cとは?炭素鋼S50Cの特徴・特性、S45CやS55Cとの違い、SS400との使い分けを解説

JIS G 4051をもとに筆者作成(一部省略)

S50Cは鉄鋼材料のひとつで「機械構造用炭素鋼鋼材」と呼ばれる汎用的な鋼材です。
一般機械部品の材料として広く使用されています。

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S50Cの特徴

炭素を含む鉄鋼=炭素鋼

S50Cとは炭素を0.5%前後含む炭素鋼であり、材料記号の50という数値は炭素の含有量を示しております。価格も比較的安価で汎用性の高い材料です。

S50CとS45C、S55Cの違い

これらの材質の違いは炭素含有量で、それ以外は同じです。
S45Cと比べてS50Cの方が炭素量が多いため、焼入れ時の硬度はS50Cの方が若干硬くなります。
S55Cはさらに硬度が高くなりますが、その分靭性に劣ります。
また一般的にS45Cは丸材S50CとS55Cは角材として流通しております。

S50Cの長所・メリット

  • 五大元素の含有量が決まっている
    SS400と違い、成分が規定されているため、材料屋の違いやロットの違いによる品質のバラつきを少なくすることができます。→金属の五大元素とは?
  • 焼入れによって硬度を高めることができる
    炭素を0.3%以上含有する鉄は、焼入れによって硬度を上昇させることができます。
    処理方法にもよりますが、全体焼入れの場合S50CであればHRC50前後の硬度になります。

S50Cの短所・デメリット

  • 安易に焼入れすると思わぬ歪みが発生することも
    形状にもよりますが、焼き入れをすることによって材料が歪むことがあります。
    特に薄くて長い材料は歪が顕著に表れるため、焼入れに適しません。
    薄い材料の硬度を上げたい場合はハードクロムメッキなどで代用することをオススメします。

SS400との違い、使い分け

前述したようにS50Cは炭素を含む成分量が規定されているので、成分が安定しております。
また、焼入れで硬度を上げたい場合もS50Cなどの炭素鋼を使用します。
溶接性については炭素量の少ないSS400の方が優れており、SS400は材料費が比較的安いのでサイズの大きいベースや精度がそこまで必要のない部品については、SS400で十分だと思われます。
また、SS400は残留応力が高いので切削箇所(掘り込みなど)が多い部品にはあまり適しておりません。

S50Cなのに焼入れの指示がない。これっておかしい?

S50Cだからといって必ず焼入れして使わなければならないわけではありません。S50CはSS400に匹敵する流通の良さや安さといった特徴もあるので、非常に使い勝手のいい材料です。また先述のように品質もSS400より安定しているため、焼入れが無くても採用するシーンは多いです。

加工方法

  • 切削加工◎
    被切削性も悪くないので、切削加工はしやすい材料といえます。
    ただし、焼入れ後は硬度が上がるため研磨などでの仕上げが一般的です。
  • 溶接△
    S50Cは炭素を一定量含んでいるため、溶接時に焼きが入り表面に割れを起こす場合もあります。溶接できない材料というわけでもありませんが、溶接向きとは言えません。
    溶接したい場合はSCM材などの方が適しております。

表面処理、焼入れについて

  • めっき
    S50Cはあまり錆に強くないため、めっきなどの処理をして腐食を防止したり、耐摩耗性を上げて使用する場合が多いです。
    安価かつ精度が高いが防錆効果は低めの「黒染」、精度が高く膜厚をコントロールしやすい「無電解ニッケルめっき」、焼入れせずに高い硬度を得られる「ハードクロムめっき」などが挙げられます。
  • 焼入れ
    S50Cは焼入れをするとHRC50~程度になるため、機械的強度があがります。焼入れをすることによって炭素鋼の利点を活かす事ができます。

Raytech(レイテック)ではS50C加工部品も対応致します。

Raytechでは、マシニング加工・旋盤・研削・溶接といった加工から熱処理・めっきなどの後処理まで一括して引き受けます。
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まずは無料見積もりから、お気軽にお問い合わせください。


材料の基礎について学びたいかたはこちらへ→【材料を学ぶ】1.材料の全体像 材料の種類や特性を解説

参照

“JIS G 4051:2016 機械構造用炭素鋼鋼材”.日本産業標準調査会.2022-02.https://www.jisc.go.jp/index.html